唐突ではあるが、昔の話をしよう。
フィッツジェラルドの著書「グレート・ギャツビー」の一節を、無駄に引用させて頂こうと思う。
これは私が、まだ年若く今より傷つきやすかった頃の話。
些細な出来事だったが、あまりにインパクトがあったので、今でもはっきりと覚えている。
それは、暑い夏の夜の事だった。端的に、ある場面から物語は始まる。
友人が意中の女性にアタックしたのだ。愛の告白とでも言うのだろうか。
結果は、木っ端みじんに玉砕。
足取りもぎこちない状態になっている友人。立っているのも不思議なくらいだ。
白髪がさっきより増えた様にも感じる。少し老けたか。
しかし、彼は、私の方など見向きもせずに、真っ直ぐに一点を見つめて、
声にならない声を振り絞り、こう呟いたのだ。
「順調・・・! 順調・・・!」
私は、言葉を失った。
(なっ・・なんて奴なんだ!この1ナノも順調ではない状況で、この発言。)
漢とは何かを、身を持って教えてもらった気がした。
物語については、この一場面にとどめておこうと思う。
アメリカ文学の最高峰とまで言われたフィッツジェラルドを持ってしても、
これは書くことのできなかったエピソードであろう。(書くほどでもなかっただろう。)
その後、この友人の言葉「順調!」は、私の人生において大きな糧となっていった。
失敗やチャレンジをする度に、高い壁に立ちはだかられ、あげく崩れ落ちそうになる。
そんな時、この言葉を声に出すと、また立ち上がり頑張れるのだ!何度でも!何度でも!
現実逃避とは、また一味違う回復術なのかもしれない!不思議と力が湧いてくるスイッチの様な言葉。
今、心が折れそうな、そこのあなた!理屈抜きに声に出してみて欲しい!
「順調・・・! 順調・・・!」