Future Ship 〜episode0〜♯02

TSU16022820_TP_V

今では大企業で活躍する、ある男との話。この男と出会って、早くも4年くらいの月日が経つだろうか。彼を見ていると、「時間は、人を育みながら道を開いて行くものだな。」と再確認できる。

怒られるかもしれないが、言わせてもらいたい!出会った頃の彼の第一印象は、右も左も分かっていない”不思議くんオーラ”をまとう”新卒のおぼっちゃん”といった感じだった。そんな彼と出会って間もない頃、特に印象的だったのは、2、3ヶ月経っても、ある一定の距離感を保ったままで、付かず離れずの姿勢を崩さなかった点だ。当時、今の若い人の距離感や付き合い方というものは、こんな感じなのかと、少し希薄にも感じられ、戸惑った事を覚えている。

しかし徐々に、仕事やプライベートの事を話しながら、一緒に飲む事も増えていき、だんだんと打ち解けていった。今では、朝まで一緒に飲む事もあるくらいで、凄く仲が良いと私は思っている。彼の思いは、全く違うかもだが。笑

ガッツだぜ!

さて、ここからは、そんな彼と出会った頃の話を中心に進めていこう。当時、彼の最大の魅力は、「実直」なところだった。それは、今も健在に感じる。任された仕事に対して、分かりやすく「一生懸命」に向き合う。例えるなら、誰も取れるはずがないと諦めたホームランの打球を、ダイビングキャッチをするかの如く取りに行く。もちろん、結果としては、取れるはずもなく、ただただ激しいダイブを決め込むだけだ。汗

そう!彼には、ガッツがある!狙いなどではなく、単純明快な程にガッツを見せてくれる!これは、凄く大切な事だと私は思う。組織に飛び込んで間もない人にとって、すでに出来上がっているチームの中へ飛び込むという事は、それなりにハードルがあるものだ。

ましてや、すぐに機能するという事に拘るのならば、覚える事も多く、また直結して多大な時間を要する。それも、社会人経験も業界経験も少ないとなれば、なおさらである。 そんな状況で、組織に溶け込むのであれば、手探りにでも果敢に飛び込んで、与えられた業務をやってみる事が最短ルートかもしれない。その点で、彼は凄かった。要領の悪さが目立つものの、後がないかの如く必死で毎日頑張っていた。

そして、うまくいかない事も、時には起こる。その度に、彼は、グッと踏ん張っていた。そして、気持ちを切り替えて、また果敢に業務に向かっていた。しかし、人はそれ程タフにはできていない。少しずつ、ゆっくりと決壊の様なものが崩れようとしていた。

仕事終わりの酒

ある日、何が切っ掛けになったかは定かではないが、そんな彼と二人で仕事帰りに飲みに行く事になった。共に汗を流した仲間と、それも仕事終わりに飲む酒というのは、格別にうまい!

Mr.Childrenの曲にも、確か「戦後の日本を支えたものの正体」などと歌われていた様に思う。酒は、張り詰めたものを緩めた時間に変えてくれる。それでも、仕事とは不思議なもので、酒の席をこの上なく盛り上げてくれるのは、奇しくも仕事の話だったりする。最初は、敢えて触れていなかった仕事の話も、気がつけば話題のど真ん中に鎮座していた。

空いたジョッキやグラスの数と共に、彼の気持ちも緩んできたのか、保たれていた距離感も感じなくなっていた。同時に、だんだんと仕事に対する悩みの様なものが、彼から溢れ出していた。

彼が話してくれたのは、「俺、向いてますかね?」「みんな、凄いですよね。俺、役に立っていますかね?」と、こんな風な内容を連呼していた様に記憶している。

後輩から、この辺りのニュアンスの言葉が漏れると、勘の良い人でなくとも、思う事は、たったひとつ「まずい!」本人の中で、結論に近いものが出始めていると心配になった。社会経験や業界経験が少なく、尚且つやる気に満ち溢れた若者ならば、起こるべくして起きてしまう、焦りというやつだ。

どれだけ、気を張って頑張っていても、日々蓄積される小さなストレスの積み重ねは、やる気をむしばんでいく。

プライドバリア

そんな彼の話の中に出た、この一言が無ければもう止める事はできないと思った。それは、「下木さんって折れませんよね。」という言葉だった。私の勝手な受け止めになるかもしれないが、このメンタル強化という部分で何か伝える事ができれば、変わるかもしれないと思った。

あとは、彼が自分のメンタルの弱さを自覚してくれて、仕事に向き合う事ができれば、道は変わってくると感じた。私の少ない経験から感じ得た、メンタル強化に繋がる話を真剣に伝えた。それは、かつて私に、諸先輩方が説いてくれた時の様に。

彼のメンタルを強化するポイントは、ひとつだと思っていた。”謙虚に振る舞う姿勢の裏に隠れる、プライドという名の自己防壁を取り除くこと”

若い頃の私もそうだったが、仕事に少し慣れてくると、先輩から受ける注意に対して、実は心の中では反発している部分がある。反発している原因は、初心だとしても「できている。」という自負があるからだ。だから、腹が立つ。この繰り返しは思ったよりストレスを溜め込んでいく。

すると、そのストレスを回避するために自己防衛として、「俺のプライドが許さないバリア」略して「プライドバリア」を構えてしまう。プライドバリアを構えた人に対しては、注意も助言も跳ね返されてしまう事がある。そして、中には段々とやる気を低下させて、会社を去る決断に至ってしまう人も少なくないだろう。

プライドの所在

そこで、彼に話したのはこんな話だ。

*業務詳細に触れた記述はできないため完結にまとめさせて頂く。

「今、お前は、何だかんだ言って、プライドが邪魔してる。」「仕事におけるプライドという言葉は、自分のプライドがどうかと言う時に使うのではなくて、誰かのプライドを守るってのがカッコ良いじゃん。誰かのプライドを守れる様に、頑張ってみようよ。」と。

これは、今のスーパーソニックの根幹にある考え方でもあるが、理念に沿わない個々のプライドを尊重するのではなく、一人一人が、仲間のプライドを守る立ち振る舞いができる様に意識し合い、その集合体としての組織でありたいと考えている。

また、彼にはこんな話もした。

「いちいち、へこむな!いちいち悩むな!へこんでも悩んでも解決はしない!自力で解決しないから、へこんでんだろ!悩んでんだろ!」「それよりも発想を変えて、迷った時には、良識を重んじた上でカッコ良いと思う方を単純に選択してみよう。」と。

これも、今のスーパーソニックにも言えることだが、初めての連続で迷う事がある。しかし、迷う時というのは、どちらをとっても正解の様で、逆にどちらをとっても不正解の様に感じる意外と些細なところで発生する。

と言う事は、後々、どちらであれば自分達が納得できるか、後々、どちらを取れば胸を張って語れるか、そんな所に重きをおいても良いのではないかと考えている。

「迷ったら、カッコ良い方を取れ!」
(ここにおける格好良さとは、正しい方・小粋な方などの意味も含む。)

「人は何も考え無ければ、正しい方に重心を置く。」と誰かが言っていた。

今思えば、私も、よく偉そうに、こんな話をしたなと思うが・・・。

数年経って、彼からこんな事を言われた。
「下木さんから聞いた話を、後輩に話したら喜んでましたよ。」と。

誰かに話した内容が、連鎖して誰かに伝わり、少し誰かを育む事に影響を与えている。

まさに、このブログを始めた時の想いは、近い友人との間で、すでに育まれていたのかもしれない。

つづく。

Pocket
LINEで送る